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【新春対談】一般社団法人太田青年会議所 第62代理事長 高橋 佑介 × 太田市長 穂積 昌信 氏

高橋 大学生のときに、姉がメキシコに行ったことをきっかけに初めて海外に触れ、大きな刺激を受けました。その後、留学も経験し、価値観や人生観が大きく広がりました。2024年度は日本青年会議所の国際関係の委員長も務め、海外の青年たちと接する機会を多くいただきました。さらに、太田青年会議所として、台湾・台中の合作國際青年商會との交流も続いています。
こうした経験やご縁を、今度は太田市内の学生の「原体験」として届けたい。自分が大学生になってから得たものを、もっと早い段階で子どもたちに味わってもらえたら、将来を考えるきっかけになるのではないかと思っています。太田市でも交換留学事業に取り組まれていますが、教育や国際感覚を育むことの意義について、市長のお考えを伺いたいです。

穂積市長 おっしゃる通り、海外は「行ってみなければ分からない」世界です。そこで得た経験は良くも悪くも一生残り、その後の人生に大きな影響を与えます。子どもの頃にさまざまな体験をすることは、将来を形づくる大きな要素になりますし、教育はまさに国の根幹だと感じています。
一方で、社会が複雑化する中、日本の若者の死因の多くが自殺という現実があります。学校に行けない子どもたちもいて、その理由は一人ひとり違う。簡単に答えが出る問題ではありませんが、だからこそ、学校だけに任せるのではなく、地域社会全体で「本当の意味で子どもを支える」仕組みをつくっていく必要があります。
学校に通えている子はもちろん、そうでない子も等しく学べる環境を整えること。そして、将来のことを少しでも考えられるような体験の場を提供すること。その中で、国際的な視野を身につけることには大きな意味があります。もし、学校にはなかなか行けないけれど、海外には関心があるという子がいるのであれば、むしろそういう子にこそ渡航してほしい。世界の現実に触れることで、何かが変わるきっかけになるかもしれません。そうした取り組みが、どこかのタイミングで生まれることを期待しています。

高橋 2026年度は、姉妹提携を結んでいる台中の青年会議所とのご縁を活かし、太田の中高生を台湾に連れていきたいと考えています。人数は多くはありませんが、数名から十数名を対象にしたいと思っています。
大切なのは、渡航した子どもたちが“アンバサダー”として役割を果たしてくれるかどうかです。現状で学校に行けていない子や、興味・関心の持ちどころが分からずくすぶっているような子にも、彼らの体験や気づきが伝わってほしい。
その仕掛けとして、帰国後に友人や学校で話してもらったり、発表の場を設けたりしたいと考えています。私の中では、市議会の議場での発表が一つのイメージです。報道関係者にも来ていただき、ほかの学生にも聞いてもらう。相当緊張すると思いますが、その経験も含めて、子どもたちにとっては大きな財産になるはずです。

穂積市長 とても良いアイデアだと思います。議場での発表は確かに緊張するでしょうが、海外での体験と、帰国後のアウトプットまでを一つのプロセスとして経験できれば、子どもたちにとっては忘れられない学びになるでしょう。
現状で悩みを抱えている子どもたちが、いきなり海外に行くのは簡単ではありませんが、まずは行った子が周りに伝えていくことで、次の一歩につながる可能性があります。そうした「波紋」が広がるような事業は、太田市にとっても非常に意義深いと感じます。市としても、協力できるところがあれば、ぜひ力になりたいですね。

高橋 ありがとうございます。国際事業の一方で、「まちづくり」の分野でも子どもたちの参画の場をつくっていきたいと考えています。市長は22万人の太田市民を代表して市政を担っておられますが、現在のまちづくりの課題についても、お考えを伺えますでしょうか。

穂積市長 市長として就任して以来、私が大事にしているのは「一つひとつの物事に向き合い、全力を尽くす」という姿勢です。首長は何か一つの分野に重点を置き、「太田市といえばこれだ」という特徴を打ち出すやり方もあります。しかし、社会はそれだけで成り立っているわけではありません。表に出る部分があれば、どうしても陰になってしまう部分もある。それが世の中の縮図です。
だからこそ、その“表と裏”をできるだけなくしていきたい。まちづくりの課題は多岐にわたりますが、「太田市の未来」と一口にいっても、それは誰にとっての未来なのか、まずそこを考えたいと思っています。

穂積市長 22万人一人ひとりが、それぞれの未来を背負っている。その一人ひとりのために、市として何ができるか、どんな後押しができるか。
ときには「家から一歩外に出る」「近所の人とお茶を飲みに行く」「グラウンドゴルフに参加してみる」。言葉にするとささやかなことかもしれませんが、そうした一歩の積み重ねが街を変えていきます。遠方から移住してきたひとり親の方に、友人ができる場をつくることもそうです。そうした“身近な小さなこと”を後押しできるまちづくりをしていきたいですね。
同時に、太田市は「ものづくりの街」という大きな顔を持っています。大企業は安定して利益を出していても、中小企業は事業承継や経営面で大きな悩みを抱えています。ものづくりを担う中小企業の皆さんが新たな一歩を踏み出し、新しい価値を生み出せるよう、市としてさまざまな事業や支援策を通じて
後押ししていきたい。太田市を、ものづくりを主軸としながらも、新たな価値が次々と創造される街にしていくことが目標です。

高橋 太田青年会議所でも、上州ファントレイルやランタン事業などを通じて、外から太田の魅力を知ってもらう取り組みや、子どもたちに夢を語ってもらう場づくりを行ってきました。来年度も、さまざまな主体が今より一歩前に進めるような事業を構想していきたいと思っています。青年会議所の活動を通じて強く感じるのは、「街を良くする」という目的を掲げながら、一番成長させてもらっているのは自分自身だということです。多くの経営者の方や行政の皆さま、子どもたちと関わる中で、リーダーとしての視点や覚悟を学ばせていただきました。青年会議所は、まさにリーダーを育成する団体だと感じています。

穂積市長 私自身も、JCがなければ「町のために何かを考える」という発想すら持たなかったと思いますし、仲間と一緒に汗を流す経験もできなかったでしょう。震災後の事業では、自分たちの「思いやり」が相手にとっては押しつけになりかねないということも学びました。相手を理解することの難しさ、人と人をつなぐことの尊さ——それらを教えてくれたのが青年会議所でした。
一方で、仲間と事業をやり遂げた経験は、今でも年に一度集まって昔話で盛り上がれるほどの絆になっています。大人になってから、会社とは違う形で友情を育める貴重な場所がJCです。
リーダーとは、自分の想いを持ち、それを共有して一緒に動いてくれる仲間がいて初めて成り立つものです。結果がどうなるかは分からない。それでも、最後までやり遂げる過程にこそ価値がある。その感覚を、私はJCでたくさん経験させてもらいました。これからの太田青年会議所の皆さんにも、ぜひ多くの挑戦を通じて、街のため、そして自分自身の成長のために活動を続けていってほしいと思います。

高橋 チームをつくる経験も、JCならではの学びですね。
本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。

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