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【対談】第57代理事長 原田正浩 × 太田記念病院 有野病院長 新春対談

原田 私たちの団体は、20歳から40歳の青年が集まって、地域をより良くしようとすることを趣旨とした団体です。昨今の情勢下で私たちの団体に限らず、色々なことを考えなければならない状況におかれています。本日は、医療現場の目線でお話を伺わせていただければと思います。
 まずは太田記念病院様について教えていただければと思います。

有野病院長(以下「有野」と略させていただきます。) 当院は、太田市と近隣を担当する救命救急センターを持つ第3次救急病院です。それだけではなく、色々な疾患、外傷を含めた専門的な治療が必要な方を治療しています。群馬県の中でも当地域は医師が多くなく、他の地区と分担することが困難であるので、この病院でできるだけのことを行うという気持ちで日夜励んでいます。救急については太田市では6つの病院で輪番制で対応していますが、他では手に負えないようなものは当院でほぼ全てをお引き受けしています。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、地域全体で見ていかなければいけないということが今まで以上に明らかになり、協力体制をいかに実効性のあるものにしていくということを考えています。地域の医師会、保健所や消防など協力して、少しずつ形ができてきたというところです。新型コロナウイルス感染症については、昨年2月のダイヤモンドクルーズ号の集団感染を始め国内外が未曾有の危機に直面し、未だ終息の兆しが見えていません。病院内でも当初は検査も中々できず、分からないという状況で皆の不安は大きかったのですが、この地域で誰かがやらなければならないということで、職員全体で頑張ってくれて今も続いており、私も感謝しています。

原田 地域全体で取り組む課題であると思いますし、私たちもしっかりと考えながら進めさせていただきたいと思います。
新型コロナの流行によって、医療現場というのはどのように変化したのでしょうか。

有野 病気のことが分からなかったころには、まず自分たちが罹らないようにしっかりと予防し、この病院でやり抜くということを方針とし、できるだけ安全にやるためにはどうしたらいいのかということを考えました。疑いのある人とそうではない人を違う場所で診られるように動線を分けなければいけない、時間や場所で分けて、通常よりも手間をかけなければいけませんでした。ゴールデンウィークの頃に職員1人の感染者が出てしまいましたので、その人の立ち回ったところを消毒し、濃厚接触者に当たる人とそれを否定できない人を検査し、濃厚接触者1名には2週間の待機をしてもらいました。今であれば全病院を閉めることはしないと思いますが、当時は職員の動揺が大きく、他の病院が当時やっていたように外来や救急を全て止めました。それは決断しなければならなかったのですが、ゴールデンウィークだったこともあり多少影響は少なく抑えることが出来ました。2週間経って終息し、元に戻しました。その頃というのは、全国的に緊急の必要がある手術以外の手術は中止という時期でしたので、予約を先送りしたり、電話で診察をできるように対応したりと今までにない混乱がありました。それから新型コロナウイルス遺伝子検査(LAMP法)を院内でできるように整備し、徐々に通常の診察ができるようになりました。ただ時々、地域で多くの感染者が出るとまた小さな混乱が起きるということになります。合わせて1病棟を感染者専用にしたことで他の所がいつもより忙しくなってしまい、直接頑張っている人とそれを支える人、さらにその支えている人を支える人と、病院全体が協力して対応していたのだと感じます。幸いなことに、病院のスタッフ全員がそのように向かってくれていますので、比較的スムーズに進んでいます。

原田 2020年に入って医療体制がかなり変わったということが分かりました。やはり全体で協力することが重要であると理解させていただきました。世の中でも大規模なイベントが中止になり、私たちの事業でも開催の有無を厚生労働省が出している方針に沿って判断しています。新型コロナウイルスについて私たちや地域で、どのような対応をしていかなければならないかをお聞かせください。

有野 まずは自分たちが罹らない生活様式をすることです。いわゆる三密を避けるという基本的なことをしっかりと実践していれば良いと思います。罹るような環境かもしれないという場合でも、2週間すれば人にうつらないはずですので、その間に次の濃厚接触がなければ広がることは少ないはずです。イベントがあったときには、そのイベントとイベントの間を2週間空ければ、大きく広がることは少ないのではないかと思います。

原田 メディアでも言われている通り、三密を避けるという基本的なことが重要であると理解させていただきました。いわゆるコロナ疲れですとか、少し慣れてきてしまっている部分が世の中にあるかと思いますので、そこに関しては青年会議所全体としても気を付けていければと思います。もし万が一、私たちが新型コロナウイルスに感染の疑いがあるという場合、どうしたらいいのでしょうか。

有野 かかりつけの医療機関がある方はそこに相談をして頂く。医師会を通じて最初の診察検査まではいくつかの医療機関でやって頂けると聞いています。そういうかかりつけの医療機関がない方は、保健所が中心になった受診・相談コールセンターというところがありますので、そこに連絡してください。その中から、例えば当院だと必要な人の紹介を受けて再検査するということになっています。その際も、検査をしてから来ていただくとスムーズであるということと、本当に必要な人に必要なことをより重点的に行えるということで、是非疑いがあったらかかりつけの医療機関もしくは受診・相談コールセンターに相談していただき、適切なルートで診断治療していただければと思います。

原田 私たち青年会議所の2020年度は、中々思うような事業展開ができなかったというのがあります。ただその中でも、例えば太田市への消毒液の寄付であったり、イオンモール太田様で献血事業をさせていただいたりと、この時代に寄せて事業展開させていただきました。2020年度は今不足していることというのを追求した年であったかと思いますが、医療現場で今不足していることであったり、必要とされていることをお伺いさせてください。

有野 最初に患者さんが増えたころというのは、マスク、ガウンというものが無かった時期もあったのですが、それは今はかなり改善されています。国や県や、SUBARUの会社から、あるいは地域の方々からのご支援で、物質などの使うものは大丈夫になっています。ただ、陰圧室・感染症病床は限られており、できる範囲でやらなければなりません。それから人です。どこの医療機関でも、人が十分に足りている病院は無いのではないかと思います。また足りないという形ではないですが、風評被害などが起きないような協力、支援を頂ければと思います。当院については、他で聞くより風評被害は少ないと思っています。ただ、無いわけでは無いし、そういうことがあると心が折れてしまい、そうするとミスや感染するリスクが増えてしまいますので、全てのことに良くないと思います。治れば普通の人ですから、罹った人を追いかけるというのは間違ったことです。地域でやり抜くということを出来たらと思います。

原田  仰る通り設備対応等もあるかと思いますが、やはり人というのが重要な部分であって、皆で協力していくということが重要だと感じました。次に地域の問題をお聞かせいただきたいと思います。太田市全体で言いますと、地域固有の問題といった部分もあるのではないかと思います。例えば工業都市であったり自動社社会であることが言えると思いますが、私たちの団体では例年ファントレイルという1000人規模で山を登るようなマラソン大会のような事業をさせていただいています。そういった特色というのは太田市全体でもあると思いますが、医療面から見た地域の問題点をお聞かせください。

有野 太田市、東毛地区というのは医師が少ないです。太田館林医療圏というのは群馬県で10に分かれている医療圏の一つですが、人口当たりの医師が一番少ないのです。人数が少ないことでやれることに限りがあります。そして、人数が少ないことでこれまで協力体制がそれほど組めていなかったのかもしれません。しかし、無いなりに何とかしなければいけないと考えていかなければのり切れないはずです。県民性なのかもしれませんが、人の優しさ、周りの人への配慮というのが皆さん良く、そういうものでカバーしているのかなという気がします。

原田 私たちの団体としても人との繋がりを大事にしてきました。ここ最近は、やはりコロナの流行により人との対面の仕方というのが大きく変わったと思っていまして、その点では私たちも悩んでいるところであります。今のお話しのとおり、県民性、人との繋がりというのは不変であると思いますので、私たちもそれをヒントに活動して行ければと思います。
 最後の質問になりますが、太田記念病院様から太田青年会議所への要望というものはございますか。

有野 今、楽しいことが少ないんですね。三密でなければ、まばらであれば、幸い広い土地がありますから、そういうところで出来ることをして皆が参加する、あるいは参加しているのを見たり話しを聞いたりということでも、楽しさが出てくれば皆の糧になるのではないかと思います。若い人が元気にしているのを見るのはそれだけで楽しいことですし、また医療従事者もそこには参加させていただけると思いますので、是非皆が楽しめる何かをやっていただければと思います。

原田 楽しさを地域に波及させるということは私たちも重要だと思っています。今年の秋、金山城を舞台にレクリエーションを子どもたちに向けて展開させていただいたのですが、事業自体も好評で、世の中イベントが中止になっている中で、そういった事業が求められていることを確信しました。お話しの通り私たちもただ中止とするのではなく、医療従事者の方や行政とも連携をとって、この時代に即した方法で事業展開をしていきたいと思います。

太田記念病院 有野 浩司(ありの・ひろし)病院長

学歴
昭和62年          慶応義塾大学医学部卒業
平成9年             医学博士
 
職歴
昭和62年          慶応義塾大学医学部助手(整形外科)
昭和63年          大田原赤十字病院 整形外科医師
平成元年           平塚市民病院 整形外科医師
平成3年             浜松リハビリテーションセンター 整形外科医師
平成3年             東京都国保連合会福生病院 整形外科医師
平成4年             慶応義塾大学医学部助手(整形外科)
平成5年             小田原市立病院 整形外科医師
平成8年             清水市立病院 整形外科医長
平成9年             防衛医科大学校助手(病院整形外科)
平成12年          スウェーデン王国ルンド大学訪問研究員として留学
平成13年          防衛医科大学校 指定講師(病院整形外科)
平成16年          防衛医科大学校 講師(病院整形外科)
平成25年          防衛医科大学校 准教授(整形外科講座)
平成28年          独立行政法人国立病院機構 東京医療センター整形外科医長
平成31年4月 SUBARU健康保険組合 太田記念病院 副院長兼整形外科主任部長
令和元年6月 SUBARU健康保険組合 太田記念病院 病院長
   
免許・資格
昭和62年          医師免許
現在                  日本整形外科学会専門医
                         日本手外科学会専門医・代議員
                         日本末梢神経学会評議員
                         日本肘関節学会評議員
                         日本末梢神経学会評議員
                         東日本手外科研究会世話人
                         アメリカ手外科学会会員
                         日本整形外科学会脊椎脊髄病医
                         日本整形外科学会運動器リハビリテーション医
                         日本整形外科学会リウマチ医 など

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