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【対談】第56代理事長 塚本将成 × 俳優・舞台演出 濱本暢博新春対談

塚本 濱本さんとは、2013年に(当時の)荒木委員長が演劇をされたときに初めてお会いしました。私も入会2年目で右も左も分からず、荒木さんに副委員長をやってくれと言われて。初めて演劇に触れさせていただいて、こんなにすごいものがあるのかと衝撃でした。濱本さんとしても、そういうことを単独でされたのが初めてだったとか。
濱本 そうですね。私が作・演出を担当して、一般の方と演劇づくりをするのは、初めてでした。自分がプレイヤーで人を楽しませるというのをずっとやっていたのですが、作品作りで人が成長する姿を目の当たりにして、成長の材料に演劇・映画を使うというのは素晴らしいことなのではないかと気づき始めました。色々な人の日常がより豊かになったり、笑顔を増やしたり、人間として当たり前のことを、お芝居を使って恥ずかしさなくできるというか。「ありがとう」にしても、「愛してます」にしても、セリフに起こしておけば出来るという感じですね。(2014年の)塚本さんの事業の時に、前年に主演をやっていた女の子が2年目も受けてくれました。色々な子にチャンスを与えたいから、2年連続で主演は無いと最初から言っていました。お芝居をしていないときには小道具を作ったりしています。その子からしたら、去年は主役でお芝居の稽古ばかりだったのが、2年目は小道具づくりをする時間がすごく長くなりました。それで、その子のお母さんが、もしいやだったらやめてもいいよ、といったらしいのです。そうしたら、私は去年、裏で小道具を作ってくれていた人たちがいたから主演が出来たというのを知った、今こうやって作っているのが楽しいんだから2度といわないでくれと怒られたという話を聞いて、うれしくて。そういった感じになって欲しいという願いを込めてその役にしたら、それを感じてくれたんです。
塚本 よくJCも役割を演じると言います。青年会議所自体も、会社があって家族があって、そのほかの時間で行うもので、架空に近い部分があります。だからこそ、失敗しても大丈夫だよとかいうのがあります。人の成長というところで考えると、JCも同じような感じです。今まで青年会議所は色々な事業を行ってきて、影響を与えてはきたのですが、青年会議所自体、昔のような結束力をもってどんどんやっていくという感じからは、若干離れてきているなというのがあります。それは、上の側の人間もアプローチの仕方にも問題があって、うわべだけの付き合いになってきてしまっているからなのかなと。せっかくいい事業をやるにあたっても、出てきてくれないとそれを知ってもらえない。内部がしっかりしていないと、外への発信も弱くなってしまう。会としての魅力も少なくなってきてしまうのかなと。人数が減ると、やれることも減ってきてしまう。中身に関しても充実させていきたいというのがあるのですが、その中でも今年55周年ということで特に青年会議所にクローズアップした演劇をやらせていただきました。こちらの意図するところ全てを具現化していただけたというのが、ありました。
濱本 55周年のときは、青年会議所の皆さんをキャストに使って、青年会議所の皆さんの心を鼓舞するようなストーリーということで、ホームページを拝見させていただきました。すべては未来のためにということで、まさに私自身も思っていることです。大人が、生き生きとして、楽しそうに毎日を送っていたら、子供たちがあこがれると思うんですよね。子供は純粋なので、大人たちが利益と言い出したら、人と人とのつながりがどんどん薄れると思います。大人が一所懸命になる姿を見せなきゃと思います。何故かといえば、すべては未来のためなんですね。僕の感性が変わり始めたのは、3.11が大きいんですね。10万年後の世界でも、子供たちに笑っていてほしいなと思っていて、そのバトンをつなぐのは今の大人しかいないと思っています。今の大人が一所懸命にやって、一所懸命に笑っていれば、未来は絶対に明るくなる。子供たちは生き生きして、子供たちが生き生きすれば未来も生き生きしてくると信じています。そのツールに演劇はふさわしいと思っています。青年会議所は、色々ないい事業をいっぱいされていると思います。でも、子供と大人が同じフィールドで切磋琢磨できるのは、多分無いと僕は言えます。お芝居は、今回は僕が演出なので、僕が答えなのです。大人がどんないい芝居をしようと、僕が違うと言えば違う、子供が全然違う芝居をしようが、僕がそれいいねといえばいい。お互い同じフィールドなんですよね。
塚本 そこは、今年も関わらせていただいて改めて実感したところです。先ほど、青年会議所が演技に近いという話をしました。今のお話の子供たちというのがまさにメンバーであって、上役が大人。そして、いいねと駄目だというのが、青年会議所の世界なら調整がきくんですよね。いくら駄目でも今日の司会良かったよと褒めたり、いくらよく出来ていても調子に乗っているなと思えば、ここはしっかりしておけよと叱ったりできる。
濱本 素晴らしいですね。お芝居以外にそういうことが出来ないと思っていたのですが、青年会議所の皆さんはそれをやっているということですね。
塚本 会社の大小や年齢を唯一超越できる。大会社の社長でも、後から入ってくれば後輩というのが成り立つおかげで、成長に繋がる。それがこの会の良さだったのかなと。
濱本 そうですね。それを意識してできるかどうかだとおもいます。意識して出来ればすごいと思います。
塚本 今それに気付いている人があまりに少ない。青年会議所の場合はそれが成り立たなくなりつつあるというのが正解に近いと思います。役を演じているのでその役の人に対しては絶対に従うという形の演技ができないというか、その辺のバランスが崩れてきていて、昔と変わってきているのかなと。バーチャルな世界から、現実世界に近づいてしまった。青年会議所がリアルになりつつある。やるのであれば全力でやれば、演劇の事業みたいになるはずなんですよね。みんな仲良くなるじゃないですか。
濱本 そうですね。終わった後に皆熱いものがありますよね。そういうのがどんどん増えてほしいですよね。
塚本 今回対談させてもらったのも、自分が青年会議所活動をやってきた中で、出会いが大事だったというか。荒木さんに会っていなければ副委員長を受けていませんでした。荒木さんが濱本さんを連れてきて事業をやっていなければ、その翌年委員長をやっていたかなと。結局、青年会議所という狭い範囲で考えると、濱本さんは感謝の対象でしかないです。
濱本 僕にとっても感謝しかないです。お二人との出会いが僕の人生を変えたようなものですから。演劇が人を変えるというのは分かっていましたが、自分がプレイヤーをやめてまでとは思いませんでしたから。今回の55周年も、大人の皆さんも含めてもう一度やりたいと言ってくれたり、高揚感がいっぱいあります。またやりたいですね。
塚本 今回ほとんどの人が初参加でした。もう一度やって欲しいと言われて、ここまで望まれるとは思いませんでした。
濱本 親御さんが皆言っていました。子供が行くのが楽しそうとか、皆に合うのが楽しいみたいでとか。僕の夢は今回のようなことを色々なところでやること。分母を増やせば波及していくではないですか。今は年に1回とか、地域限定になっていますが、例えば年に5回になったら5倍に広がるわけです。
塚本 先ほど、やっている最中子供たちが楽しそうだったというお話を聞きました。できれば、こちら側の人間もそうなってもらいたかった。自分も稽古には参加させていただきましたが、すごい回数やります。毎週のように長い時間やっているけども、それが苦にはならなかった。青年会議所にとっても、次にこういう事業があるんだ、楽しみだなという形になるヒントがあるんじゃないかなと思いました。
濱本 非現実のもの、しかもやったこともないことを同じ目的をもって作り上げるというのは、時間があっという間に過ぎますよね。この間、藤岡の街映画を撮りました。最後、舞台あいさつで夢は何ですかと主演の子が振られたときに、私の夢は青年会議所に入って多くの人を笑顔にすることです、と言ったんです。藤岡青年会議所の皆さんが撮影現場で汗水たらしていた姿が、彼女の中で格好良かったんですよ。事業が終わった後に、将来自分も青年会議所に入って一緒にやりたいという子が増えるくらい、やるべきです。やっぱり大人が一所懸命にやっている姿を子供は見ますから。
塚本 一緒なはずなんですよね。青年会議所も未知の体験をしています。例えば、100kmは不思議な事業で、普段出てこないメンバーがあの事業だけ出てくるというのがあるんですよね。しかも、長年やっているので、歩く側の子供たちが、当時のお兄さんお姉さんに憧れて、ボランティアとして戻ってきたケースもあります。だからこそ、青年会議所の側がもう少し目立ってもいいのではないかなというのがあります。目立つことがいいことかといえばそうではないと思うのですが、縁の下すぎて、トレラン、100kmは良い事業ですねという話で終わってしまう。青年会議所という団体がやっていると知らないんですよね。
濱本 意外に青年会議所という団体を知らない人は、すごく多いですよ。映画を撮っていても、親御さんも初めて知りましたとか。
塚本 せっかくいいことをやっているのであれば、少しでも目立てばやっているメンバーのモチベーションにもなります。日本人の考え方として目立たないところで頑張るというのが美徳ではないですか。自分もそういうのが好きな方なのですが、今のご時世で通用しなくなっているのかもしれません。折角いいシステムでいい事業でいいことをやっているのに、委員長を受けたくないとかあって。死ぬまでやれと言う人はいません。折角所属していて年会費を払っていて、役職をやらなかったらもったいないじゃないかと。自分もいい人に出会ったからこそ今こういう状態になっていると思うと、少しでも自分の経験を活かしながら未来に繋がるように、一人でも多く役職やってみたいですという人が出る、来年1年をかけてそういう状態に持っていければなと。来年のその後でもいいので、火種だけでも残せればと思います。
濱本 是非そうなっていただければ。素敵な事業をされている団体なので、活動が少なくなるというのは寂しいです。
塚本 本日はお忙しい中にも関わらず、ありがとうございました。私自身も来年理事長としてやっていく中で、メンバーに背中を見せていければと思うので、是非濱本さんにおかれましても今後もよろしくお願いします。

濱本 暢博(はまもと・のぶひろ)
広島県尾道市出身。
劇団の公演をはじめ、テレビ、映画、CMと多方面で活躍。近年では、アイドルや俳優のイベント等で司会もこなす。また、群馬県内を中心に、地域活性化事業の一環で、映画・舞台をその「まち」の人と創っている。
劇団の公演をはじめ、テレビ、映画、CMと多方面で活躍。近年では、アイドルや俳優のイベント等で司会もこなす。また、群馬県内を中心に、地域活性化事業の一環で、映画・舞台をその「まち」の人と創っている。

【映画作品】
2014年 「漂泊」出演
2013年 「グラス・ホッパー」出演
2011年 「しゃんしゃんしゃん しゃしゃしゃんしゃん」出演
     「タイムマシンカー」出演
2010年 「ViVA!Kappe」出演
     「虹の街」出演
2003年 「幸福の鐘」出演

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